「データの取り方」 | thinkstep株式会社


「データの取り方」

月と地球の間の距離は384400km。よくもそんな遠方に月探索衛星を正確に打ち上げられると思う。しかし、紙をわずか42回折るだけで月に到達してしまうといわれるとそんなに遠くもないのかとも思う。厚さ0.1mmの紙を1回折るごとに2倍、その2倍と計算すると7回ほどで1cmを超え、瞬く間に月に到着してしまっている。自分の距離感覚が鈍っている。大きな数字にごまかされないようにしよう。

 

陸上男子100mの世界記録保持者ウサイン・ボルト(ジャマイカ)100m958で走りきる。9712位のタイソン・ゲイ(米国)9843位のアサファ・パウエル(ジャマイカ)は走る。脚の回転数をみるピッチではゲイが最高時点で1秒間に4.90歩でトップ、ボルトは4.48歩でパウエルの4.75歩にも及ばないが、ボルトの最高スピードは他の2選手を圧倒している。速度感覚が生活とまったく違うので、その数値の偉大さが実感できない。小さな数字でも気軽に使うのは背筋が寒くなる。

 

LCA(ライフサイクルアセスメント)やカーボンフットプリントでは環境負荷を計算するために最も確からしいデータを使用することが大切だ。LCAではフォアグランドデータとバックグランドデータの2種がある(注:カーボンフットプリントではフォアグランドデータを1次データ、バックグランドデータを2次データと呼ぶことが多い) 前者はLCA実施者が自ら製造工程や輸送、使用、廃棄に係るデータ収集する。後者はLCA実施者がデータを集めることが大変困難といわれている材料製造情報、電力/燃料製造情報などで、一般文献やLCAソフトあるいは専門機関提供データから引用することが許容されているデータである。

 

ボルト選手がなぜ早いのかを解明するカギは、100mの記録やピッチを正確に集めるだけではわからなかった。100mの間のピッチの変動と歩幅を知って初めて納得できたという。特にゴール直前の最後の1歩は3mだという。本質に迫るデータが有効なのだ。

 

LCAの結果はデータによる。データ項目の選定、データ抽出の背景を把握しておくことが重要だ。品質の高いLCAを行うためには「データを集めるのではない。情報を集めるのだ。」とドイツのLCA専門家から聞いた。いい言葉だ。(C